眼鏡・コンタクトの在庫管理を会計上の所有、物理的な場所、販売可能性、顧客引当で分ける。ASBJの棚卸資産基準は仕掛品を資産に含めるため、受注レンズと輸送中在庫を所在・権利・工程状態別に照合する方法を示します。
フレームと度数別在庫
三つの在庫台帳を混ぜない。フレームは現物ごとに品番・色・サイズ・店・状態を追い、受注加工レンズは注文IDと工程に結び付ける。会社が所有し販売目的で保有する加工中レンズは仕掛品であり、棚卸資産から除外しない。コンタクトは製品・度数・規格・ロット・期限ごとに数量を持つ。同じ度数でも規格や製造ロットの違う箱を合算すれば、先入先出、回収対象の絞り込み、棚卸差異の調査ができない。移動時は送り元・受領側の確認者を記録し、会計上の所有、保管場所、販売可能性、顧客引当を別の項目にする。
フレームは一個の現物在庫、眼鏡レンズは受注後の加工仕様、コンタクトはロット・期限付き包装品で、管理単位が違う。フレームの型番に色・サイズと展示状態を、コンタクトには一般的名称・製品規格・度数・ロット・使用期限を持たせる。注文加工レンズは注文IDに結び付け、完成前に販売可能在庫として二重計上しない。棚卸表の単位と仕入伝票の単位が異なる場合は換算方法を残し、箱と枚数を混同しない。
受注レンズと現物フレームを同じ棚在庫の一覧に足すと、注文時点ではない品を顧客へ約束する。販売可能、展示専用、注文引当、加工中、修理中、返品判定、廃棄予定を状態として分ける。コンタクトは外箱と内箱のロット表記が一致するか入庫時に確認し、棚札の度数違いは入れない。商品担当が項目定義とコード体系を承認し、POS・EC・倉庫の各画面で同じ定義が表示されるか試験する。
商品マスター変更時は旧コードとの対応表を維持し、返品・保証・回収で購入時仕様を検索できるようにする。
売場変更後は実棚・POS・ECの数量を同じ時刻に照合し、古い引当を削除する。
商品マスターの更新権限を商品管理者へ限定し、店舗からの変更依頼は承認待ちにする。 在庫の定義を操作手順書に記す。
参考資料:JINS:国内店舗への出荷業務を改善した新たな流通体制、厚生労働省:薬機法施行規則(第162・164・165条)、企業会計基準委員会:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
期限・ロット
GMROIは一定期間の粗利益を平均在庫原価で割った在庫収益性の指標で、利益率や現金利益そのものではない。仮に税抜の月売上100万円、売上原価60万円なら月粗利40万円、平均在庫原価90万円なら月GMROIは40万÷90万=0.444である。月を年へ換算する際に単純に12倍するなら季節性の影響が大きいと注記する。平均在庫は期首と期末だけの平均より日次または週次残高が望ましく、棚卸日だけの在庫では欠品前後の振れを隠す。
コンタクトの期限・ロットを管理するには、入荷時に外箱表示を読み取り、数量・入荷日・販売期限・保管位置を登録する。出庫は期限の早いロットから割り当て、注文変更で元ロットを解除したら新しい引当先も履歴に残す。仕入元から回収連絡が来た場合は対象製品・ロットの販売を止め、店頭・EC・店間移動中の在庫を照合する。販売先の履歴が追えない場合、管理者は所在調査が終わるまで同一品目の出荷を保留する。
ロット・期限台帳は仕入納品書、外箱ラベル、販売履歴を品目コードでつなぐ。出荷時に期限・ロットをスキャンできない場合は、期限順ピッキング後に別担当者が記録を照合する。期限訂正を受けた商品は管理者が証拠の表示・製造販売元情報を確認し、旧値を履歴に残す。品質通知でロット不明の箱が見つかったら周辺在庫も含めて販売を止め、仕入元の回答が得られるまで通常棚へ戻さない。
期限表示が読めない箱や期限の異なる同一ロットは販売可能在庫と一緒に置かず、品質担当の確認へ回す。
回収訓練では対象品を実際に検索し、数分以内に販売停止・隔離できるか責任者が確認する。
使用期限と販売期限を混同せず、包装表示と適用される製品文書から基準を確認する。 期限不明品は隔離棚で保管する。
欠品と過剰在庫
販売効率の判断には在庫回転、値下げ、欠品、作業負担も加える。商品群Aが高GMROIでも、顧客の注文仕様と合わず欠品しているなら、店頭提案機会を失う。SKUを減らす場合は、売上が少ない型の他店取寄せ日数、同型代替率、修理部品との共通性を調べる。コンタクトの期限切れ・破損廃棄は「販売できなかった数量」と「原価金額」を分けて記録する。期限間近の値引販売可否は製品表示、品質条件、社内ルールを確認し、期限を越えた品は販売引当から外す。
欠品と過剰在庫の比較はSKUごとに行う。欠品では、販売したいと申し出た顧客数、代替商品へ移った割合、取寄せを待った日数、最終的な注文可否を記録する。滞留では入荷日・最終販売日・試着数・値下げ・他店移動を見て、展示訴求と品番需要の問題を切り分ける。コンタクトは期限が近づいても単純に値下げ商品へ回すのではなく、包装状態・法令・メーカー指示を確認する。販売可能性に根拠がない商品は保管枠から隔離し、廃棄・返品の承認を記録する。
発注点は直近販売数、補充リードタイム、欠品許容、最小発注量を品目群ごとに決める。フレームは展示の幅が価値を持つため単純に回転数だけで終売せず、顧客予約の取寄せ実績を見る。コンタクトの度数別補充は、期限が切れる前に売れる数量かロット単位で確認する。欠品のため代替品を販売したときは元商品への注文希望も記録し、少ない販売実績が潜在需要ゼロと誤解されないようにする。
発注量の変更には承認者と適用開始日を設定し、手動の上書き理由を残して後日の欠品・滞留と照合する。
欠品の販売機会は注文希望数と代替購入数に分け、根拠のない推定売上を損失額にしない。
廃棄決裁と実廃棄記録をつなぎ、期限切れ商品が棚へ戻らないようバーコードを無効化する。 適用日ごとの発注設定を保存する。
店舗間移動
店舗間移動は余剰店から欠品店へ品物を送るだけでは終わらない。移動依頼時に顧客注文の有無、他店での確保期限、輸送中在庫の責任、送料、実物とシステムの計上時点を合わせる。コンタクト回収情報が入った場合、対象ロットの販売停止、在庫の場所別隔離、顧客連絡の担当、仕入元・所管当局への報告要否は製品の安全情報に沿って責任者が確認する。対象ロットが追えない店舗は出庫を保留し、帳簿復元を完了してから通常販売に戻す。 輸送中品は受領処理が未了でも自社所有なら棚卸照合の対象に残し、所在地を「輸送中」として区別する。契約上の所有権が仕入先にある預託品は自社資産に含めず、受領記録と所有権移転条件を仕入先台帳で照合する。
店舗間移動は店頭在庫から出した時点で送り元の数量を減らし、受領側が現物と数量を照合した時点で受取店へ計上する。移動中の箱は独立した状態で追い、EC受注が同時に入った際の二重引当を防ぐ。薬機法上の許可営業所に関わる品目は保管・販売主体と許可関係を確認し、店舗間移動を一般商品と同じ伝票だけで処理しない。移動品のロット・期限が抜けていたら受領側は棚へ出さず、送り元へ差し戻して台帳を直す。
店舗移動は管理者承認のもと、品目・数量・ロット・期限・送り先・予定到着日を移動伝票へ記録する。送り元で出庫登録し、受取側で外観と数量を確認した時刻に入庫する。途中で配送遅延や破損があれば、販売引当を解除して顧客納期を見直す。コンタクト等許可対象品は許可営業所の実地管理と記録に齟齬がないか確認し、移動先の取扱いが不明なら発送を保留する。
配送中の品は破損・紛失時の連絡先と責任を決め、受領確認まで販売数へ加算しない。
入庫差異や誤発送は店舗間の責任者が双方で確認し、修正台帳を残す。
受領店の確認が遅れても、自社が所有する数量を会計上の棚卸資産から自動的に除外せず、所在地を「輸送中」として移動伝票・配送記録と照合する。受領・検品前は受取店の販売可能数には加えない。紛失が確定していない差異は数量を消さず、所在不明の調査項目として責任者が追跡する。仕入先所有の預託品は契約上の所有権移転を別に確かめる。
参考資料:厚生労働省:薬機法施行規則(販売業等)、厚生労働省:医療機器の販売業及び貸与業の取扱いについて、企業会計基準委員会:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
棚卸
仮定データで、月粗利40万円、平均在庫原価60万・90万・120万円の三案を比べると、GMROIは0.667、0.444、0.333となる。これは同じ粗利を維持できる仮定の算数で、在庫を減らせば自動的に売上を維持できるという予測ではない。運営会議は欠品件数と注文取寄せ日数も並べ、90万円から在庫を減らす場合、売上が何件失われると粗利改善が消えるかを確認する。棚卸差異が連続するSKU群やロット記録が欠ける商品群は、回転率の比較より先にコード・実地数を修正する。
棚卸は月末に数量を合わせるだけでなく、差異の原因を商品・注文・返品・移動・廃棄に分解する。二人一組で実地数を入力し、帳簿数量を見ずに数える盲棚卸を試せば、担当者の思い込みを減らせる。差異が出たSKUは出庫履歴、店間移動、販売取消をたどり、原因が解決するまで発注量を自動補充へ戻さない。GMROIを計算するときの平均在庫は週次残高等を使い、期末だけの在庫で月の状態を代表させない。販売可能数と隔離数は別々に報告する。
棚卸差異の是正は帳簿を実数へ上書きするだけで終わらせない。直近入荷、販売取消、予約、返品、破損、他店移動を注文番号・伝票番号で追い、差異の原因コードと再発防止担当を残す。期限・ロットの不一致は品質責任者、数量差は店舗管理者、会計原価差は財務担当が確認する。毎月同じSKUで差が出る場合、バーコード配置やピッキング手順も観察し、仕入先・システム双方の原因を検討する。
棚卸確定後も訂正履歴を消さず、調整仕訳と現物差異の承認者を記録する。
棚卸確定の前にロット・期限・仕掛品を別担当が再確認し、差異が未解決なら月次確定へ進めない。
棚卸差異を訂正したら在庫評価と月次損益の再計算範囲を財務担当が判断する。 会計修正は承認後に実施する。
参考資料:厚生労働省:薬機法施行規則(販売業等)、JINS:国内店舗への出荷業務を改善した新たな流通体制、企業会計基準委員会:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
仮定値による月GMROIの在庫感度
数値は説明用の仮定です。棒図の指標単位は 月GMROI(比率)、ゼロ位置を基準に負値は左、正値は右に表示します。実績や相場を示しません。
| 平均在庫原価 | 月粗利(税抜仮定) | 月GMROI=粗利÷平均在庫原価 |
|---|---|---|
| 600,000円 | 400,000円 | 0.667回/月 |
| 900,000円 | 400,000円 | 0.444回/月 |
| 1,200,000円 | 400,000円 | 0.333回/月 |
- +0.67 月GMROI(比率)
- +0.44 月GMROI(比率)
- +0.33 月GMROI(比率)
| 条件 | 符号付き数値 | 単位 |
|---|---|---|
| 在庫60万円 | +0.67 | 月GMROI(比率) |
| 在庫90万円 | +0.44 | 月GMROI(比率) |
| 在庫120万円 | +0.33 | 月GMROI(比率) |
全金額・期間は説明用の仮定、税抜・月次。月粗利が在庫案によらず400,000円に維持される前提であり、欠品・滞留・作業時間を含む実績予測ではない。
眼鏡・コンタクト在庫単位の比較
| 管理対象 | 在庫・追跡単位 | 引当・移動処理 | 販売停止条件 |
|---|---|---|---|
| フレーム現物 | 品番×色×サイズ×個体状態 | 展示・販売可能・他店移動を区分 | 現物不一致、破損、商品停止通知 |
| 受注レンズ | 注文ID×左右別加工仕様 | 仕掛品として工程状態を追う | 確定仕様欠落、加工不適合 |
| コンタクト | 製品×度数・規格×ロット×期限 | 先入先出、販売履歴と回収照合 | 期限切れ、包装不良、対象ロット回収 |
確認・判断の工程
- 現物・受注仕掛品・医療機器在庫を区分
- ロット・期限・店間移動の入出庫を記録
- 注文確定時に状態別在庫を一時引当
- 棚卸担当と管理者が現物・台帳差異を照合
- 回収対象・期限切れ・追跡不能品は出庫停止
工程は判断論点を示す編集部の整理です。各事業者の手順・法令上の要件を保証するものではありません。
仮定の検討例・実績ではありません
仮定ケース:眼鏡・コンタクトのSKU在庫管理の業務判断を再現する
仮定:月売上100万円、原価60万円、粗利40万円、平均在庫原価60万・90万・120万円の三案を比べる。期間は月、すべて税抜の編集例である。
月GMROIは粗利÷平均在庫原価で各0.667、0.444、0.333回/月となる。再加工等変動費4万円を別控除して限界利益36万円とする場合も、粗利基準のGMROIとは別表示する。
商品部はSKU別の欠品日、他店移動、取寄せ日数、滞留日数を週次で集める。コンタクトは度数・規格・ロット・期限を入庫時に照合し、受注加工レンズは仕掛品の数量・原価を工程別に記録し、フレーム等の現物在庫と重複しないよう分ける。
在庫90万円案を採る場合、粗利維持が確認できるまで店舗全体へ適用しない。差異、期限不明、回収対象があれば出庫を止め、管理者が記録を復元して解除を承認する。
算出されたGMROIは粗利額を維持できる前提の在庫効率比較である。店長は削減候補SKUごとに欠品注文と補充納期を確認し、在庫を減らした後に粗利が下がった場合は比較を中止する。コンタクトの期限・ロットに差異がある店舗は回転率向上の施策より先に記録を修正し、管理者の解除承認前は販売対象へ戻さない。 廃棄・返品・移動で数量が変わった日はGMROIの平均在庫計算へ正しい日付で反映する。棚卸値と在庫評価額が合わない場合は改善値として報告せず、財務担当の調整が終わるまで翌月へ持ち越す。
よくある質問
GMROIは在庫回転率ですか?
同じではありません。粗利を平均在庫原価で割る在庫収益性指標で、期間・分母を示して比較します。
コンタクト在庫の度数だけ記録すれば十分ですか?
製品規格・ロット・期限を含めた追跡が必要です。該当品の回収や期限切れで販売を止められる台帳にします。
在庫を減らすと利益は必ず増えますか?
いいえ。欠品による失注や取寄せ負担で粗利が下がることがあります。販売・欠品・作業の実績を同時に比較してください。
一次資料と確認範囲
一次資料を根拠に制度・公表事実を説明し、比較・運用案は編集部の整理として区別しています。法令や仕様は適用条件と現行資料を再確認してください。
- 厚生労働省:薬機法施行規則(販売業等)公表日・改訂日:資料内に明記なし(確認日とは別)。対象期間:統計期間なし(法令)。2026-10-05取得時点の現行掲載本文。。参照箇所:第162条第1・2項、第164条第1–3項、第165条、第173条第1–4項。確認日:2026-10-05。根拠と適用範囲:施行規則162条は高度管理医療機器等営業所管理者の品目別要件、164条は営業所管理帳簿・研修・品質・苦情回収・教育の記載と最終記載後6年保存、165条は医療機器の品質確保を定める。173条は取引相手・品目等に応じた記録と保存を定め、特定保守管理医療機器は15年、管理・一般医療機器等の一部記録は努力義務。個別の品目指定・許可結論は所管自治体に確認する。
- JINS:国内店舗への出荷業務を改善した新たな流通体制公表日・改訂日:2022-04-06。対象期間:2022-04-07開始予定、店舗数は2022年3月末時点。。参照箇所:見出し「最新の店舗の販売実績に基づく適切な在庫管理」と出荷方式の説明。確認日:2026-10-05。根拠と適用範囲:JINSは2022-04-06発表で、店舗販売実績に応じ出荷頻度・数量を調整する流通体制を2022-04-07から始める予定と説明した企業事例。店舗数・排出量試算は当時の対象期間に限られ、業界標準・現行値ではない。
- 厚生労働省:薬機法施行規則(第162・164・165条)公表日・改訂日:資料内に明記なし(確認日とは別)。対象期間:統計期間なし(法令)。2026-10-05取得時の掲載版。。参照箇所:第162条第1・2項、第164条第1–3項、第165条。確認日:2026-10-05。根拠と適用範囲:施行規則162条1・2項の品目別管理者基準、164条の営業所管理帳簿と最終記載後6年保存、165条の品質確保は異なる要件。162条の指定視力補正用レンズ等の該当性は別規定・自治体案内と照合する。
- 企業会計基準委員会:企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」公表日・改訂日:最終更新日2026-07-17(ASBJページ表示)。対象期間:統計期間なし(会計基準)。2026-10-05取得時の掲載版。。参照箇所:企業会計基準第9号「会計基準」第3項(棚卸資産の範囲)。確認日:2026-10-05。根拠と適用範囲:基準第3項は商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等を棚卸資産に含め、営業目的上所有し売却予定の資産等を対象とする。物理的位置・販売可能性・顧客引当の区分や契約別の輸送中所有権移転時点をこの段落だけで決めない。
- JINS HOLDINGS:投資家向けIR資料一覧公表日・改訂日:資料内に明記なし(確認日とは別)。対象期間:統計資料ではなくIR資料一覧。ページの個別公表日は不明。記事で引用する数値期間なし。。参照箇所:IRライブラリ「有価証券報告書」「決算短信」「決算説明資料」。確認日:2026-10-05。根拠と適用範囲:公式IRライブラリは有価証券報告書、決算短信、決算説明資料など企業開示の入口である。単一企業の開示を市場全体、他社の標準値、独立した効果検証として一般化しない。
- 厚生労働省:医療機器の販売業及び貸与業の取扱いについて公表日・改訂日:2015-04-10。対象期間:統計期間なし(行政通知)。。参照箇所:第1の2(管理者要件・品目)、第1の3(1)(帳簿等)。確認日:2026-10-05。根拠と適用範囲:通知は管理者要件・取扱品目、営業所の帳簿記載事項、電子帳簿の営業所別管理と閲覧・出力について説明する。個別の許可申請・指定品目の最新解釈は自治体の現行案内と照合する。
